五十肩になりやすい人の特徴と注意点:あなたの肩は大丈夫?

「肩が上がらない」「夜中にズキズキ痛む」…五十肩の症状に心当たりはありませんか?五十肩は、特定の年代に多いと思われがちですが、実は生活習慣や身体的な特徴、過去の病歴なども深く関係しています。あなたの肩は大丈夫でしょうか。この記事では、五十肩になりやすい人の具体的な特徴から、見落としがちな初期サイン、そして日々の生活でできる予防法や悪化させないための注意点まで、詳しく解説しています。ご自身の肩の状態と照らし合わせながら読み進めることで、早期の気づきと適切な対策に繋がるでしょう。

1. 五十肩の基本を知る

1.1 五十肩とはどんな病気?

五十肩は、正式には「肩関節周囲炎」と呼ばれる症状の総称です。肩関節の周囲にある腱や関節包、滑液包などの組織に炎症が起こり、痛みや動きの制限が生じる病気です。

この症状の大きな特徴は、肩を動かそうとすると痛みが走り、次第に肩が上がりにくくなったり、後ろに手が回しにくくなったりすることです。特に、夜間や安静時にも肩に痛みを感じることがあり、睡眠を妨げる原因となることも少なくありません。

五十肩の発症原因は特定されていませんが、加齢による肩関節周囲の組織の変性や血行不良などが関与していると考えられています。自然に症状が改善することもありますが、放置すると肩の動きが固まってしまう「拘縮」の状態に進行し、日常生活に大きな支障をきたすことがありますので注意が必要です。

1.2 四十肩との違いを理解する

五十肩とよく混同されるのが四十肩です。どちらも肩の痛みと可動域の制限を伴うため、同じ症状だと誤解されがちですが、発症する年齢層に違いがあることが一般的です

五十肩は主に40代から60代の方に多く見られるのに対し、四十肩はその名の通り40代を中心に発症することが多いです。病態としては、五十肩は肩関節周囲の組織全体の炎症や拘縮が主な原因であるとされています。

一方、四十肩は特定の原因(例えば、腱の損傷など)が明確な場合もありますが、多くの場合、五十肩と同様に原因が特定できない「肩関節周囲炎」として扱われます。つまり、両者は医学的には同じ「肩関節周囲炎」と診断されることが多く、発症年齢によって呼び名が変わる傾向があるのです

しかし、どちらの症状であっても、早期に適切な対処を行うことが、痛みの緩和と症状の悪化を防ぐために非常に重要になります。具体的な違いを以下の表にまとめました。

項目 四十肩 五十肩
発症年齢 主に40代 主に40代から60代
病態 肩関節周囲炎の総称。特定の原因がある場合も 肩関節周囲炎の総称。原因不明なことが多い
主な症状 肩の痛み、可動域制限 肩の痛み、可動域制限、夜間痛、拘縮
呼び名 発症年齢による通称 発症年齢による通称

2. 五十肩になりやすい人の主な特徴

五十肩は、誰にでも起こりうる肩の不調ですが、特定の傾向を持つ方々がより発症しやすいことが知られています。ご自身の状況と照らし合わせながら、予防のためのヒントを見つけていきましょう。

2.1 年齢と性別から見る傾向

2.1.1 40代から60代の男女に多い理由

五十肩は、その名の通り「五十代」に多く見られることから名付けられました。しかし、実際には40代から60代にかけて発症する方が最も多いとされています。この年代は、身体の変化が顕著になる時期だからです。

具体的には、この時期から肩関節周囲の組織の老化や変性が始まりやすくなります。関節を構成する軟骨や腱、靭帯などが少しずつ弾力性を失い、柔軟性が低下していくのです。また、血流が悪くなったり、組織の修復能力が落ちたりすることも原因と考えられます。

性別で見ると、女性にやや多い傾向があると言われています。これは、女性ホルモンの分泌量の変化が、関節や腱の健康に影響を与える可能性が指摘されているためです。特に更年期を迎える時期と重なることも、女性の発症が多い理由の一つとして考えられています。

2.2 生活習慣や身体的な特徴

日々の生活習慣やご自身の身体的な特徴も、五十肩の発症リスクを高める要因となります。心当たりのある方は、少しずつでも改善を試みてみましょう。

2.2.1 運動不足やデスクワークが多い人

現代社会では、運動不足や長時間同じ姿勢で過ごすことが増えています。特にデスクワークなどで長時間座りっぱなしの生活を送っている方は、肩や肩甲骨を動かす機会が極端に少なくなりがちです。

肩関節は非常に可動域の広い関節ですが、動かさないでいると、その周囲の筋肉や腱が硬くなり、血行も悪くなります。これにより、肩の組織が柔軟性を失い、炎症が起きやすくなるのです。また、肩甲骨の動きが制限されることも、肩関節への負担を増大させる要因となります。

2.2.2 姿勢の悪さや猫背の人

姿勢は、肩の健康に大きく影響します。猫背や巻き肩といった姿勢は、肩甲骨が本来の位置よりも前に出てしまい、肩関節に不自然な負担をかけ続けます。これにより、肩の筋肉が常に緊張した状態になり、血行不良や炎症を引き起こしやすくなるのです。

また、首が前に突き出た姿勢も、肩への負担を増やします。正しい姿勢を意識することは、肩だけでなく全身の健康にもつながります。

2.2.3 冷え性や血行不良の人

身体の冷えは、筋肉を硬くし、血行を悪化させます。特に冷え性の方は、肩周りの筋肉も硬くなりやすく、五十肩のリスクが高まります。血行不良の状態では、肩関節周囲の組織に必要な栄養が行き渡りにくく、老廃物が蓄積しやすくなります。これにより、炎症が起きても治りにくくなったり、痛みが長引いたりすることがあります。

冬場の寒さだけでなく、夏場のエアコンによる冷えにも注意が必要です。

2.2.4 ストレスを抱えやすい人

精神的なストレスは、自律神経のバランスを乱し、身体に様々な影響を与えます。ストレスを感じると、肩や首の筋肉が無意識のうちに緊張し、こり固まってしまうことがあります。この状態が長く続くと、肩周りの血行が悪くなり、五十肩の発症や悪化につながることがあります。

ストレスは、痛みの感じ方にも影響を与えるため、痛みをより強く感じやすくなることもあります。

2.3 過去の病歴や既往歴

過去に経験した病気や、現在抱えている持病も、五十肩の発症と関連がある場合があります。

2.3.1 肩や腕に負担がかかるスポーツや仕事

野球やテニス、バレーボール、水泳など、肩を大きく使うスポーツをされている方や、重いものを持ち上げたり、腕を繰り返し使う仕事をされている方は、肩関節に慢性的な負担がかかりやすい傾向があります。これにより、肩の腱や筋肉が微細な損傷を繰り返し、炎症を起こしやすくなります。

過去に肩を怪我した経験がある方も、その後の肩のバランスが崩れ、五十肩になりやすいことがあります。

2.3.2 糖尿病や甲状腺疾患との関連性

意外に思われるかもしれませんが、糖尿病や甲状腺疾患といった全身性の病気が、五十肩の発症リスクを高めることが知られています。

糖尿病の方は、全身の血流が悪くなりやすく、末梢の組織に栄養が届きにくくなるため、肩関節周囲の組織の変性が進みやすいと言われています。また、組織の柔軟性が失われやすいことも特徴です。

甲状腺機能の異常も、全身の代謝に影響を与えるため、関節周囲の組織の健康状態に影響を及ぼし、五十肩の発症につながることがあります。

3. あなたの肩は大丈夫?五十肩の初期サインと見分け方

五十肩は突然重症化するわけではなく、初期には見過ごしやすいサインがあります。これらのサインに気づくことで、早期の対応が可能になり、症状の悪化を防ぐことにつながります

3.1 「肩が上がらない」以外の初期症状

五十肩と聞くと「肩が上がらない」というイメージが強いかもしれませんが、初期段階ではそれ以外の症状が現れることが多いです。

3.1.1 夜間痛や寝返りでの痛み

五十肩の初期症状で特に特徴的なのが、夜間、寝ているときに肩がうずくような痛みを感じることです。特定の姿勢で寝ると痛みが増したり、寝返りを打つ際に痛みで目が覚めてしまったりすることがあります。これは、寝ている間に肩の筋肉や関節がリラックスし、血行不良や炎症が顕著になるためと考えられています。

3.1.2 特定の動作での肩の違和感

日常生活の中で、特定の動作をしたときに肩に違和感や軽い痛みを感じることも初期のサインです。

例えば、以下のような動作で気づくことがあります。

動作の例 五十肩のサインの可能性
髪を洗う、ブラッシングする 腕を上げる動作で肩の奥に痛みを感じる
背中のファスナーを上げる、エプロンの紐を結ぶ(結帯動作) 腕を背中に回す動作で肩が突っ張る、痛む
高いところの物を取る 腕を伸ばしきったときに肩に違和感や痛みが走る
服を着替える 袖を通す際に肩がスムーズに動かない、引っかかる感じがする

これらの症状は、最初は軽微なものであっても、肩関節の炎症や組織の硬化が始まっている兆候かもしれません。

3.2 放置するとどうなる?五十肩の進行

五十肩の初期症状を放置すると、炎症が慢性化し、肩関節の可動域が徐々に制限されていきます。痛みが強くなり、肩を動かせる範囲が狭まる「拘縮期」へと移行することが一般的です。

この段階では、日常生活における動作が著しく困難になります

  • 腕が上がらないため、高い棚の物が取れない。
  • 服の着脱が困難になる。
  • 洗髪や入浴が苦痛になる。
  • 夜間痛が続き、睡眠不足に陥る。

さらに進行すると、肩関節周囲の組織が癒着し、痛みが引いても肩の動きが元に戻りにくくなることがあります。回復までには数ヶ月から年単位の時間を要することもあり、早期の対応が非常に重要です。

4. 五十肩を予防し悪化させないための注意点

五十肩は一度発症すると、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。しかし、日頃からの意識と適切な対処によって、その発症リスクを減らし、もし発症してしまった場合でも悪化を防ぐことが可能です。ここでは、あなたの肩を守るために実践したい予防策と、適切なタイミングでの専門家への相談について詳しく解説します。

4.1 日常生活で気をつけたいこと

五十肩の予防や悪化防止には、日々の習慣が大きく影響します。特に、姿勢、体の冷え、そして運動習慣は、肩の健康を保つ上で非常に重要です。

4.1.1 正しい姿勢を意識する

現代社会では、デスクワークやスマートフォンの使用など、前かがみになる姿勢をとる機会が多く、これが肩への負担を増やし、五十肩のリスクを高める要因となります。日頃から正しい姿勢を意識することが、肩の健康を守る第一歩です。

場面 意識するポイント
座る時 深く腰掛け、背筋を伸ばし、顎を軽く引いてください。パソコンの画面は目線と同じ高さになるように調整し、肘は90度程度に保ちましょう。
立つ時 お腹を軽く引き締め、重心を足の裏全体にかけるようにします。肩の力を抜き、耳、肩、股関節、くるぶしが一直線になるイメージで立ちましょう。
歩く時 目線を少し遠くに向け、背筋を伸ばして歩きます。腕を自然に振り、肩甲骨から動かす意識を持つと、肩周りの血行促進にもつながります。
スマートフォン使用時 スマートフォンを顔の高さまで持ち上げ、下を向く姿勢を避けてください。長時間使用する場合は、こまめに休憩を取り、肩や首を回すストレッチを行いましょう。

特に、猫背や巻き肩は、肩関節の可動域を制限し、肩への負担を増大させるため、意識的に改善に取り組むことが大切です。

4.1.2 肩を冷やさない工夫

肩周りの冷えは、血行不良を招き、筋肉の柔軟性を低下させ、痛みを悪化させる原因となります。一年を通して肩を冷やさない工夫をすることが重要です。

  • 服装の工夫
    夏場の冷房が効いた場所では、薄手のカーディガンやストールなどで肩を覆いましょう。冬場は、保温性の高いインナーや肩当てなどを活用し、首元までしっかり温めることが大切です。
  • 入浴習慣
    シャワーだけでなく、湯船に浸かって体を芯から温める習慣をつけましょう。特に、肩までしっかり浸かることで、肩周りの血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎます。
  • 寝具の選択
    就寝中に肩が冷えないよう、掛け布団が肩までしっかりかかるか確認しましょう。肩周りを温める専用の寝具や、温かいパジャマなども有効です。
  • 温かい飲み物・食べ物
    体を内側から温めることも大切です。冷たい飲み物や食べ物を避け、温かいスープや飲み物を積極的に摂るように心がけましょう。

肩が冷えていると感じたら、すぐに温める対策を講じることで、五十肩の症状悪化を防ぐことができます。

4.1.3 適度な運動とストレッチの習慣

運動不足は血行不良を招き、筋肉を硬くして肩関節の動きを悪くします。また、過度な運動や不適切なフォームでの運動は、かえって肩に負担をかけることがあります。無理のない範囲で、継続的に体を動かし、肩周りの柔軟性を保つことが大切です。

  • ウォーキングや軽い有酸素運動
    全身の血行を促進し、基礎代謝を上げる効果があります。無理のないペースで、毎日少しずつでも続けることが重要です。
  • 肩甲骨を意識したストレッチ
    肩甲骨周りの筋肉をほぐすことで、肩関節の可動域が広がり、肩への負担が軽減されます。例えば、両腕を大きく回したり、肩甲骨を寄せるように胸を張ったりする運動は効果的です。ゆっくりと呼吸をしながら、痛みを感じない範囲で行いましょう。
  • タオルを使ったストレッチ
    タオルを両手で持ち、背中側で上下に動かすようなストレッチは、肩関節の柔軟性向上に役立ちます。また、タオルを頭上で持ち、肘を曲げ伸ばしする運動も良いでしょう。
  • 定期的な休憩とストレッチ
    デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続ける場合は、1時間に一度は休憩を取り、肩を回したり、首をゆっくりと傾けたりするストレッチを行いましょう。

毎日少しずつでも続けることが、肩の健康を維持し、五十肩の予防につながります。

4.2 専門家への相談のタイミング

五十肩の症状は、初期段階で適切な対処をすることで、進行を食い止め、回復を早めることができます。しかし、自己判断で放置したり、不適切な対処をしたりすると、症状が悪化し、長期化する恐れがあります。

4.2.1 自己判断せずに専門家を受診する目安

以下のような症状が見られる場合は、自己判断せずに、早めに身体のプロに相談することをおすすめします

  • 痛みが徐々に強くなっている
    特に、夜間痛がひどくなり、寝返りが打てない、眠れないといった状態が続く場合。
  • 肩の動く範囲が狭くなってきた
    腕を上げたり、後ろに回したりする動作が困難になり、日常生活に支障が出始めた場合。
  • 痛みが数日経っても改善しない
    一時的な筋肉痛や疲労とは異なり、痛みが持続したり、悪化の傾向が見られたりする場合。
  • しびれや脱力感がある
    肩の痛みだけでなく、腕や指にしびれを感じたり、力が入りにくくなったりする場合。
  • 自己流の対処で悪化を感じる
    温めたり、ストレッチをしたりしても効果がなく、かえって痛みが強くなる場合。

五十肩は、その症状や進行度合いによって適切な対処法が異なります。専門家は、あなたの肩の状態を正確に評価し、個々の状態に合わせた適切なアドバイスや施術を提供してくれます。早期に相談することで、痛みの軽減、可動域の改善、そして症状の長期化を防ぐことにつながります。

5. まとめ

五十肩は、年齢や生活習慣、身体的特徴、そして過去の病歴など、様々な要因が複合的に絡み合って発症しやすくなることがお分かりいただけたでしょうか。特に、40代から60代の方は、肩の違和感や夜間痛などの初期サインを見逃さず、早めの対処が肝心です。正しい姿勢を保ち、肩を冷やさず、適度な運動やストレッチを習慣にすることで、予防と悪化防止に繋がります。

もし、気になる症状が続くようでしたら、自己判断せずに専門家へご相談ください。早期の対応が、五十肩の進行を防ぎ、つらい痛みを和らげる鍵となります。何かお困りごとがありましたら当院へお問い合わせください。

初村筋整復院